ほっぺにチューボー!/おおうちえいこ先生
今回は『なかよし』で連載していた『ほっぺにチューボー!』について綴っていきます。
『ほっぺにチューボー!』は不器用なクッキングストーリー
▼概要・あらすじ
・タイトル:ほっぺにチューボー!
・作者:おおうちえいこ 先生(原作:夏川涼香 先生)
・掲載:なかよし(2002年4月号~2003年10月号)
・単行本:全3巻
主人公のヤミーはレストランの一人娘。
コックの父と料理好きの母を持つが、とにかく不器用で料理が大の苦手。
ある日、大好きな幼なじみの剛のサッカーの試合にお弁当を差し入れることになるが、一晩かかっても完成できずに大ピンチ!
そんなヤミーの元に、お母さんのエプロンから料理の精・ホッペが現れて…!?
▼主な登場人物
・矢吹 美味(やぶき みみ)
通称ヤミー。レストランの一人娘。料理が苦手だが、ホッペとの出会いをきっかけに特訓を始める。剛のことが好き。
・ホッペ
ヤミーのお母さんの形見のエプロンに住む料理の精。ヤミーの料理を手伝う。エプロンを着けている人にしか見えない。
・天高 剛(てんたか つよし)
ヤミーの幼なじみ。サッカーが得意で女の子にモテる。
・服辻 まい(ふくつじ まい)
ヤミーと剛のクラスメイト。料理学園の娘で、剛のことが好き。ヤミーに敵意を抱いている。
・ミッシェル
ヨーロッパ連合代表のサッカー留学生。セシルの兄。ヤミーに一目惚れする。
・セシル
フランスで天才料理少女と呼ばれる。ミッシェルの妹。剛を追いかけて日本にやってきた。セシルのエプロンにも料理の精・シューが住んでいる。
・風間 一青(かざま いっせい)
中学でヤミー、剛と同じクラスになる。料理が得意。剛に好意を持っており、ヤミーのことが気に食わない。
『ほっぺにチューボー!』の感想
先日このようなツイートをしたところ…
もちろん作る系のマンガも大好き🤤
— かぴ (@kapilog07) 2021年8月24日
子どもの頃はこの2つの作品のレシピたくさん作ったな~🍴 pic.twitter.com/ujynF6Imih
「『ほっぺにチューボー!』私も好きでした!」というリプを何件かいただいて、ブログを書きたくなりました(単純)。
この作品は元々2001年5月号のなかよしの別冊付録『ポケットなかよし』に掲載されていた読み切りだったみたいです!
私は2001年はまだなかよしを読んでいなかったので詳しい情報がわからず残念ですが、読者から好評で連載化したのかしら?(*'ω'*)
なかよしはお料理マンガが多いイメージです。
とくにこの『ほっぺにチューボー!』は私も姉も大好きな作品でした。
ヤミーが料理の精・ホッペと「ほっぺが落ちても知らないぜ!」を合言葉にさまざまな料理を作るのですが、この合言葉のタイミングでヤミーの服や髪型も変わるんですよね。
このヤミーの変身がどの話も可愛かったので毎回楽しみでした。
内容はあらすじの通りなのですが、毎回の話の展開としては
①イベントが発生する
↓
②ヤミーがライバルの言葉に揺さぶられる/失敗を犯す
↓
③剛とケンカになり泣く/自信喪失して泣く
↓
④ホッペと一緒に作った料理を剛に食べてもらい仲直りする/立ち直る
という流れが大体のテンプレです。
いい意味でわかりやすいので、子どもでも深く考えずに読めるところも人気な理由のひとつだったのかもしれません。
ですが、この③は毎回ちょっと嫌な気持ちになります。
ケンカの発端のほとんどがヤミーであるとはいえ、泣いたり苦しんだりしている主人公はあまり見たくないですから…。
ちなみにヤミーたちは1巻では小学5年生、2巻では小学6年生、3巻では中学1年生・2年生…とどんどん成長していくのですが、正直物語の中盤まではヤミー自身の成長はあまり感じられません。笑
ヤミーは泣き虫で誰かの意見に影響されやすく、考えなしに悪い方向に突っ走ってしまう性格の持ち主です。
自己嫌悪から剛やホッペに八つ当たりすることも多々あります。
たとえば2話(1巻)のピクニック回。
ライバルのまいがヤミーに対し「ソースたっぷりのコロッケを作って、口に付いたソースを拭ってあげるタイミングで剛くんのキスを狙うの」と発言します。
ヤミーは剛とまいをキスさせまいと阻止しようとするのですが、ホッペに「あたしが剛とキスできるお弁当考えてよ!」と無茶ぶり。
なぜそんな考えになるのか…。笑
さらに8話(2巻)の運動会回。
剛を追いかけてフランスからやってきたセシルの登場にヤミーは動揺が隠せません。
次の日に剛から「運動会なんの種目出るの?」と聞かれますが、そんなことよりもセシルと剛の関係が気になって仕方ないヤミーは「運動会なんてどうでもいいよ!」と急に激怒し、そのまま一方的なケンカに発展。
これには剛も「なんで運動会の話しただけで怒るんだよ」と呆気にとられます。
さらにさらに11話(2巻)のバレンタイン回。
剛に作ったチョコを渡す直前、ライバルのセシルに「私はフランスから取り寄せた最高級のチョコを剛に贈るのに、あなたはただの素人の手作り?」と煽られます。
「あんなの恥ずかしくて渡せないよ!」と夜遅くに家を飛び出して遠くのお店のチョコを買おうとしますが、目当てのお店はクローズ。
この間、ヤミーのお父さんやクラスメイト、剛はみんなで家に戻らないヤミーを探してくれていました。
どの回においても、ヤミーはまずは剛に自分の気持ちを伝えるべきなのに…。
こうした気付きは作中でホッペが教えてくれます。
大人になってからホッペの言葉を読み返すと、意外とジーンとくるものがありますよ。
このようにヤミーは他人の言動で気持ちが不安定になってしまう描写が多かったので、もっと自分の意志でいい方向に動けるようになってほしかったなぁ(^^;)
それに、他人がどんなにヤミーと剛を引き離そうとしても、剛がヤミーを誰よりも特別な存在だと思っているのは明らかです。
「オレはヤミーのが食べたいんだよ」
「これからもずっとヤミーの料理食いてーな」
「留学中ずーっとヤミーの料理が食いたかったんだ」
「ヤミーは大事なだけだ」
といった告白ともプロポーズともとれるような発言を多くしていますし、6話(1巻)ではヤミーにほっぺにキスもしています。
加えて、まいやセシルがどんなに豪華で美味しそうな料理を作っても、剛はほぼほぼヤミーの料理しか食べません。
可哀想だから一口くらい食べてあげて~とライバルたちに同情してしまうレベルに剛は他の人の料理には無関心です。笑
だからこそどんなに失敗してもケンカしても、ヤミーには「自分が剛に想われている自信」「自分が誰よりも剛を想っている自信」を持っていてほしかったと思います。
…ここまでいろいろ苦言を呈してきましたが、実際のところヤミーたちは小学校高学年という思春期の年齢。
この歳の男女が好きな人に対して簡単に素直になれるはずも、スムーズな恋愛ができるはずもない…ですかね。
この甘酸っぱくてもどかしい未熟な関係もヤミーたちが幼いからこそ。
ヤミーと剛がケンカしたりすれ違ったりするたびに「なんでお互いにさっさと告白しないの!?」とヤキモキしてしまいますが、これも子どもながらの稚さを表現した描写なのでしょう。
そこに親近感を持っていた読者もいたと思います。
「小学生だな~」と思えるシーンもいくつかありますよ。
8話(2巻)ではミッシェルが剛に「勝負だ。どっちがヤミーにふさわしいか」と勝負を持ち掛けるのですが…その勝敗を決めるのは運動会のリレー!
これはなんとも小学生らしくて好きです。笑
14話(3巻)では料理男子の一青が初登場。
一青はヤミーに剛との関係を聞き、恋人ではないと知ると「彼女じゃないんだ。俺にも望みあんじゃん!」と言い放ちます。
この発言を聞くと一青はヤミーのことが好きなのかと思いますよね。
私もミッシェルに続いてまた剛にも恋のライバルが現れるのか~と思ってました。
ところが、「あんたすっげ―ジャマ。天高くん(剛)の傍にいたらだめじゃん。天高くん狙ってるのはあんただけじゃないから」とヤミーに宣戦布告!
あれ!?ヤミーのことが好きなんじゃないの!?
いいえ、一青の想い人は剛のほうだったのです!!
その後の一青はというと、ヤミーが剛に近づけないようにありとあらゆる手段で嫌がらせを仕掛け、ヤミーのいない間に得意の料理でせっせと剛へのアプローチを始めます。
今思えば、あれは私が初めて触れたボーイズラブでしたね…。笑
一青のことは最初こそ嫌いでしたが、魔性の女から剛を守るためにヤミーと手を組んだり、剛がケガをして弱気になっているヤミーに「なんでお前が泣くんだよ。そんな弱い女なんかにぜってー天高くんは渡さねー」とヤミーを鼓舞したり。
剛のことが本気で好きであるがゆえに、なんだかんだヤミーの背中を押してくれる存在になっていました。
最終回直前の17話(3巻)では、ヤミーがケンカの流れで剛に泣きながら告白!
しかしヤミーは剛の返事を待たず、料理と手紙だけを渡してその場から走り去ってしまいます。
このとき剛は脚をケガしていたためにヤミーを追いかけることもできず…。
その後、剛は母の再婚とケガの治療のためにスイスに行くことになります。
見送りの駅のホームに一青はいますが、ヤミーの姿はありません。
え?ヤミー来ないの…?
告白の返事も聞いてないしケンカ別れしたままでいいの…?
と読者側はモヤモヤ。
ここで一青は剛に「オレ…天高くんが好きだよ」と告白。
剛は驚く素振りも見せずに「うん。サンキュー」とだけ返します。
う~ん、クール…。
そしてとうとう新幹線の出発時間に。
このタイミングで階段を駆け降りるヤミーが登場!
ヤミー!!剛のために料理を作っていたわけでもないのに!!
しばらくの別れになってしまうのに!!なぜ遅れてきたの!!
無情にもヤミーがホームに降り立った瞬間に新幹線のドアが閉まってしまいます。
顔を合わせることはできましたが、あのクールな剛の目には涙が…。
男の子が涙を流すシーンってグッときますよね。
結局ヤミーと剛は言葉を交わすこともできずにサヨナラとなってしまいました。
ここで二人が結ばれることはなく、最終回までお預けです。
…そして迎えた最終回はなんと一年後。
ようやくヤミーと剛が結ばれるときが来ました。
中学サッカーの決勝戦のために剛はスイスから帰ってくると信じて待つヤミー。
ホッペはもちろん、恋敵だったまい、セシル、一青、そしてミッシェル、お父さんに見守られながらお弁当を作ります。
そして決勝戦では、ヤミーが信じていた通り剛はケガを治して復帰!
見事優勝を果たした剛のもとに駆け寄るヤミー。
剛の好きなクリームシチューを包んだパイを渡します。
パイを食べた剛は一年前と変わらない笑顔で「うまい!」…
そして、「ヤミーの手紙が支えだった。それがあったから夢を諦めなかった。ヤミーが好きだ」と告白します。
読者としては「オイオイ!やっとか!!」という感じです。笑
告白と同時に剛は大胆にもフィールドでヤミーにキスをします。
そのキスシーンは見開きで大きく描かれているのですが、ヤミーはスプーンを落とす「ティン…」という音まで大きく書かれていてほんのちょっとシュール。
当時の私はこの「ティン…」がちょっとおもしろくて、感動的であるはずのキスシーンに集中できなかったなぁ…。笑
告白されたあとのヤミーの心理描写がまったくないのが残念ではありますが、なんだかんだ二人がちゃんと結ばれてくれてよかったです。
ライバルたちもなんだかんだ祝福してくれてると思います!
また、おおうち先生の画力は回を追うごとに向上しているように感じられます。
とくに料理の絵のクオリティがどんどんアップしているのでそこにも注目です。
さてさて。
作中ではヤミーが美味しそうな料理をたくさん作っていますが、単行本の巻末にはこんな感じで登場した料理のレシピがすべて掲載されています。
私のお気に入りは5話(1巻)で登場するこちら!
ロコモコとフローズンヨーグルトです。
この2つは簡単すぎて今でもよく作ります。
過去に撮った写真が残っていたので載せておきます。
野菜は心に余裕があれば。笑
このレシピをきっかけにヨーグルトは絶対に凍らせて食べるようになりました。
プリンも凍らせて食べるのが好きです!
ちなみに『ポケットなかよし』時代にもレシピが載っていたみたいです。
ピーナッツバター+バナナのサンドイッチのレシピが人気だったようで、Twitterでもつぶやいている人がチラホラいました。
『ほっぺにチューボー!』のレシピを見たいという人も多くいるみたいなのですが、単行本は絶版となっており、電子書籍もないんですよね…(;∀;)
ネットに出ている画像もほとんどなく、この記事のトップの表紙画像は手持ちのコミックスを撮りました。
電子書籍化されたらすごく売れると思うんだけどなぁ…
余談ですが、一カ月前にアイビスペイントをインストールしてみたんです。
インストール後なかなか使うタイミングがなかったのですが、この機会に5話のヤミーとホッペを描いてみました。
私のデジタル絵の処女作です。笑
使い方がわからずとりあえずサイズもツールも初期設定のまま描きました。
慣れたら今後もブログ用に作品のイラストを描いてみようかしら…。
人物紹介で各キャラのイラストを入れられるようになりたいです。
ちなみに剛の友達のツンツン頭の男の子、登場率は高いのに名前は最後まで出てきませんでしたね。
果たして彼に名前はあったのでしょうか…。
最後に
「『ほっぺにチューボー!』、懐かしいなぁ~どんな話だっけ?」って思った人がこの記事にたどり着いてくれたら嬉しいです(*^^*)
先述の通り電子書籍化されていない貴重な作品なので、当時の別冊付録や単行本をお持ちの方はこれからも大切にしてほしいです…!
もし運よく見つけられた方は是非手に取ってみてください。